政府の規制やユーザーに関する課題に対応
世界各地に700のフランチャイズ店を抱え、オーストラリアのベーカリー市場で14.6%のシェアを持つBakers Delightは、さまざまな制約に直面しています。オーストラリアでは、フランチャイズ店が使用するハードウェア、ソフトウェア、オペレーティングシステム、アプリケーションなどを指定することが法律で禁じられているため、情報の共有が困難です。そのため、Bakers DelightのIT戦略は、オンラインポータルサイトからの商品の提供に重点を置いています。
Bakers Delightでは、フランチャイズ店の多くが適切なシステムにアクセスず、そのためにベーカリーとしての可能性を最大限に発揮し、高いレベルの収益性を達成できていませんでした。この点は、ITチームも把握していました。「フランチャイズ店が利益を上げられるようにすることは、当社にとって大きな関心事です」と、Bakers DelightのCIO、Joanne Stubbs氏は語ります。
Bakers Delightにとってもう1つの課題は、アプリケーションのパスワードを忘れたフランチャイズ店からの問い合わせが絶えず寄せられることでした。問い合わせが膨大な数に上り、サービスデスクの手に負えない状態になっていたのです。
Bakers Delightはかつて、別のシングルサインオン製品を利用していました。しかし、その企業が事業を停止したため、代わりのアイデンティティ管理ソリューションを検討せざるを得なくなりました。検討にあたり、同社のITチームは、セキュリティに関する懸念がなく、Active Directoryを使った追跡が不要な製品を求めていました。
Bakers Delightは社内でActive Directoryを利用していますが、フランチャイズ店では使用していません。Stubbs氏は次のように話しています。「問題はActive Directoryです。そこで、外部のフランチャイズ店に対しては、Active DirectoryではなくOktaを使用しています」
さらに問題を複雑にしていたのは、Bakers DelightのITチームがフランチャイズ店がどの給与システムを使用するかについて決定権を持っていなかったことでした。そのため、フランチャイズ店の社員が入社または離職したことや、セキュリティの脅威が迫っていることを可視化できませんでした。フランチャイズ店の社員が離職した際には、システムへのアクセスを制限する必要があり、ITチームはそうした社員をいつ削除できるのか把握する必要がありました。つまり、知的財産権を社員に侵害されるリスクを常に抱えていたのです。「当社のレシピやオペレーションマニュアルを保護するために、知的財産権に関するセキュリティを大幅に強化する必要がありました。競争の激しいフランチャイズ環境では、このことが特に重要です」とStubbs氏は語ります。
堅牢なソリューションを求めOktaにたどり着く
さまざまな問題が積み重なったことから、Bakers Delightはアイデンティティソリューションを探すことにしました。求めていたのは、同社のシステムにある知的財産以外の情報にフランチャイズ店がアクセスできるようにすること、そして多数のパスワードを覚える煩わしさから解放してくれることでした。そのため、業務の負担を軽減するロールベースのアクセスを主要な要件としました。
さらにStubbs氏は、サプライヤーからの注文をオンラインで処理できるアプリなど、フランチャイズ店に導入するアプリが今後増えていくと考えていました。このことも、同社がソリューションを探すきっかけの一つとなりました。
その上で、フランチャイズ店が買い物客に質の高いカスタマーサービスを提供できるように、ITチームはフランチャイズ店に対して優れたカスタマーサービスを提供したいと考えました。Stubbs氏は次のように話しています。「私の目標は、ITチームがフランチャイズ店に対し、今より優れたエクスペリエンスを長期にわたって提供できるようにすることでした。フランチャイズ店の業務を楽にして、優れたサービスを買い物客に提供することに集中できるようにしたいと考えたのです。そうすれば、買い物客はさらに多くのパンを買ってくれるようになりますから」
新しいアイデンティティソリューションを探そうと考えたもう1つの要因は、Bakers Delightが使用するすべての小麦粉を提供している卸売業者Manildraに関するものでした。フランチャイズ店に手頃な価格で小麦粉を提供することは非常に重要です。しかし、Manildraは、フランチャイズ店が注文する小麦粉の量を把握するために、各店舗に週2回電話をかけており、このままではフランチャイズ店関連のコストが増えるばかりだと訴えていました。Manildraでは、電話での問い合わせにかかるコストを軽減したいと考えていました。「Manildraは週に2回、すべての店舗に電話をかけていましたが、オーストラリア各地に600の店舗があるため、これは負担のかかる業務でした」とStubbs氏は振り返ります。
利益とセキュリティの向上を目指してOktaを採用
Bakers Delightでは、新しいプロジェクトを検討する際に、必ず費用対効果と投資収益率を分析しますが、Oktaの分析結果は良好でした。「Oktaを使用すれば当社の知的財産が悪用されるリスクが軽減されるとCEOに報告しました」とStubbs氏は話しています。
Stubbs氏は、フランチャイズ店にとってアプリを魅力的なものにするだけでなく、簡単に入手できるものにするソリューションを探す必要があると考えていました。ITチームがOktaを選んだ大きな理由の一つは、以前使っていたシングルサインオンシステムから新しいソリューションへの移行が簡単だったことです。フランチャイズ店にとって、システムの使用感はほとんど変わりませんでした。「製品を移行してもトレーニングがあまり必要ないことが、このシステムの採用を決めた大きな要因の一つでした」とStubbs氏は話しています。
Bakers DelightのITチームは、Oktaの製品を「フランチャイズ店に提供できる最も実用的なソリューション」と判断しました。Stubbs氏も、Oktaの追加機能を活用することで、フランチャイズネットワーク内のスタッフへのサービスをさらに拡大できると考えています。
Oktaによりフランチャイズ店のアクセスが簡素化
シンプルなアクセスで関心を高める
Bakers Delightでは現在、シングルサインオンを導入したことで、フランチャイズ店がアプリケーションに簡単にアクセスできるようになり、アプリケーションへの関心も高まりました。ITチームは、新しいレポート機能を活用し、いつ誰がログインしたのかを特定し、問題のトラブルシューティングを行っています。
また、シングルサインオンソリューションの実装によって、コスト面での利点ももたらされました。その一つが、パスワードリセットに関する問い合わせの急減です。驚くことに、Bakers Delightは、問い合わせの数を50%削減するという目標を9ヶ月で達成しました。それと同時に、システムへのアクセスが50%も増加しています。
フランチャイズ店は、Bakers DelightがOktaを導入したことに満足し、シングルサインオンを大いに歓迎しました。数日で使いこなせるようになったのです。また、Bakers Delightはスタッフと情報を共有できるようにしたいと考えていました。ただし、すべての情報を共有するわけではありません。たとえば、財務や業績に関する一部の情報がすべてのスタッフに公開されることは望んでいませんでした。
安全なアクセスでより多くの情報を共有
Stubbs氏は、ビジネス全体でさまざまなロールを割り当てられることに気づきました。店舗レベルで特定のグループのスタッフに対してアクセスできるアプリケーションを制限すれば、スタッフが退職したことをフランチャイズ店が報告しなくても、大きなリスクにはならないと考えることができます。アクセスを制御し、システムにアクセスしたユーザーをより適切に監視することで、セキュリティの懸念を解消できることがわかりました。
Bakers Delightでは、Oktaを利用してフランチャイズ店がPOSシステムのバックオフィスにアクセスできるようにしました。フランチャイズ店は、自社の店舗のレポートを作成し、どのような製品が売れているのかをいつでも確認できます。「システムにアクセスできる範囲を広げ、トレーニングを増やせば、それだけ収益性が向上し、私たちにとって良い結果がもたらされます」とStubbs氏は説明します。
制御を維持してセキュリティを向上
Stubbs氏は、ITチームがフランチャイズ店に提供するアプリを常に制御できるようになったことに満足しています。「当社の戦略は、コアシステムを社内に置き、レポート作成に関する柔軟性を確保することです。なぜなら、それが当社のビジネスを促進することにつながるからです」とStubbs氏は説明します。
Oktaのおかげで、どのような新しい決済システムやハードウェア、あるいはスイッチが店舗に導入されても、ITチームは自社のシステム上で統計データやレポートに安全にアクセスできます。Oktaを利用することで、Bakers Delightは世界中でビジネスの手法を変革しているのです。
大幅にコストを削減
Stubbs氏は、ITによってフランチャイズ店のモチベーションを高めるだけでなく、フランチャイズ店のコストを削減できることにも気づきました。ITチームはフランチャイズ店に電子注文システムを提供し、小麦粉の卸売業者がフランチャイズ店に電話をかけなくても済むようにしたのです。「当社がOktaを利用したのは、フランチャイズ店にオンラインで注文を行ってもらうためでもありました」とStubbs氏は振り返ります。パンに欠かせない原料である小麦粉をオンラインで注文することで、フランチャイズ店は小麦粉の購入にかかるコストを削減できました。
Bakers Delightは、電話による注文をすべて廃止した結果、最初の3ヶ月で50万ドルのコストを削減しました。
生産性を向上
さらに、Bakers Delightは予想外のメリットにも気づきました。それは、驚くほどの時間の節約と生産性の向上が見られたことです。同社は、ITシステムへのフランチャイズ店の関心を高め、システムを利用してもらうことで、コストの削減と収益性の向上を実現できるようになりました。こうして、すべての関係者がメリットを得ています。
Bakers Delightについて
Bakers Delight(COBS Bread)はベーカリーのフランチャイズチェーンで、自社の工場で製造したパンを販売しています。35年前にオーストラリアで創業した同社は、4か国に700店以上の店舗を持ち、毎週200万人の顧客が同社のベーカリーを利用しています。